Asia Marketer's コラム

中華圏、東南アジアでの出来事をお伝えしていきます。

【中国】KOLと経済効果。年間1兆円を生む超インフルエンサーとは

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ルーハン・ホールディングス共同創立者の張大奕(ザンダーイー)(写真出典:Visual China)

中国版ユーチューバー、「網紅(ワンホン、中国ではネット上の人気者の意)」が世界的に注目されている。2018年、網紅がユーチューブでライブ配信したことで売れた商品の額は予測値で676.6億元(約1兆円)を超えたという。

中国国内Eコマース販社のリーディングカンパニーであり、網紅を含む中国のインフルエンサーを発掘・育成する企業である「ルーハン・ホールディングス」が今年、アメリカで新規株式公開を果たしたことも、中国のインフルエンサー起用型販売活性の隆盛を物語る。

 

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インフルエンサーとしても人気が高い

中国経済の現在と未来を変える「網紅」とKOLたち

ビジネスモデルを網紅たちに依存するこの企業は、現在の中国における「網紅経済」でもっとも成功した企業となっている。そして、ルーハン・ホールディングスの共同創立者、張大奕(ザンダーイー)自身を含むオピニオン・リーダー集団は、中国経済の現在と未来を静かに変えつつある。

2018年、米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーが発表した「中国ラグジュアリー・レポート」によれば、現在、ミレニアル世代が中国のラグジュアリー製品市場の主軸となりつつある。さらに、この世代の消費傾向は「KOL(キー・オピニオンリーダー)」に大きく影響されているという。

では、どのような人物が「KOL」と呼ばれるのか。 中国のメディア・コミュニケーション分野のリーディングカンパニー「群邑中国」のプロダクト・ディレクター楊晉竜(ヤン・ジンロン)によれば、「KOLの持つべき3つの要素」は、1.特定の分野で実績があること、2.能力があること、3.相当量のファン層があるとのこと。”2”はあいまい性が高いため省くが、特定の分野において相当量のファンを保有し、これらのファンに影響をおよぼせること、だ。

代表的なKOLの一人であるDivus Zhengは、KOLでもっとも重要なのは、いわば「つぶしが利くこと」と言う。「独自のブレない主観を持っていて広いジャンルに応用が利くこと、外見だけに頼らなくても市場にアピールできることが大事です」

群邑中国は昨年発表した「2018年美容社会白書」の中で、独自調査によるデータ分析ツール、「Xiaohongshu」を用いた「RED網紅分析2018」を紹介している。ここでは影響力のある100人が名を連ねているが、セレブは一握りで、美容の分野に影響力を持つKOL、あるいは網紅たちがリストの大部分を占める。

その中でも5位のブロガー、ビューティーポテト(Beauty Potato)は、中国の人気モデルで女優のアンジェラベイビーよりも高い「影響力指数」を誇っている。

多くの報告書が、網紅たちの間で現在、「种草(草を植える)」というキーワードが取り沙汰されていると報告している。「草」を育てる能力があるか、あれば何種類の「草」を育てられるか、そしてそのことによって市場に与えられる影響力はどれくらいかを表す。この能力は調節、消費者の消費傾向を左右するというのだ。

 

 

群邑中国グループの携帯事業戦略ゼネラルマネージャー、趙晨(チャオ・チェン)は、いわゆる網紅とKOLの間に明確な境界線はないと考えている。彼らは大きな影響力を持ち、発信力も強い。

「網紅はKOLと一部重複しています。大きな影響力と質の高いコンテンツ発信力を持つのが網紅の必須条件ですが、特定の分野で実績がありさえすれば、彼らはKOLと呼ばれ得ます」とチェンはいう。

そして「紅網経済」の発展に伴って、Taobao(タオバオ)やJD.com、アマゾンといったEコマースプラットフォームが、購入につながるアイデアをKOLの手法から借りるようになってきている。

EコマースとKOLの連携モデルは、マーケティングの主砲としてきわめて強力だ。ある中国国内メディアの報告によれば、前出のルーハン・ホールディングス共同創立者ジャン・ダーイーは、ある新商品を「2秒で売り尽くした」という伝説的な記録を打ち立てたという。その驚異の影響力は多くのトップセレブにも肩を並べる。

こうした「大きな波」の中で、KOLに立ち上げを依存するEコマースのプラットフォームは、国外向け直販を専門にするEコマースサイトも含め、後を絶たない。

海外のショッピングサイトたちは、ロングテール理論を参考にEコマースでもっとも有効な5つの商品カテゴリーをはじき出している。それらは「マタニティと子ども」「健康」「ファッション」「美容」「流行ブランド」だ。そして彼らは、これら各カテゴリーのKOLと積極的に連携しようとしている。

 

 

海外向けショッピングサイトの共同設立者兼CEOの沈学華(シェン・シュエフア)は、プラットフォームにしろ連携の形にしろ、その連携の経路や形にしろ、この2年間におけるKOLの変化も大きいと考えている。

「われわれは初期段階から、KOLを一人ひとり見つけていきました。KOLの方でも、自分をうまく仲介してくれる企業を見つけようとしていました。一人のKOLとの連携により、同じ会社の別のKOLとも連携できます。弊社はこれまでに、独自の『KOLデータベース』を構築しています」とシェン・シュェファはいう。

 

 

セルフメディアの多様性と不確実性

「網紅経済」の発展にともなって、セルフメディアのプラットフォームもますます増えてきている。KOLと電子商取引の連携はひとつのプラットフォームだけに限定されるものではなく、複数のプラットフォーム上で予想もしない効果を生み出す。

自身がKOLであるDivus Zhengに言わせれば、いわゆるオピニオン・リーダーはセルフメディアで「遊ぶ」ことを覚えた好奇心の強い人々だ。KOLは誰より早くユーザーになる、いわばアーリーアダプターだ。そして経験したことを、自らのユーザー体験として公開する。そして彼らはほかのユーザーにもKOLになることを奨励するので、自然発生的に一種のコミュニティが形成されるというのだ。

Zhengは、このようにも言う。「その後の継続的なコミュニケーションで影響力を持ち、KOLでい続けるには、コンテンツの制作と交流に注力するより多くのエネルギーが必要です」