Asia Marketer's コラム

中華圏、東南アジアでの出来事をお伝えしていきます。

【中国】中国経済、世界での重要性が更に高まる =英国経済学者=

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中国国家統計局が16日に発表した第2四半期の中国経済データは国際社会から注目されている。

英国の学者で、中国経済の専門家であるマーティン・ジャック氏は、「中国経済が第2四半期にマイナスからプラス成長に転じたのは、その力強い強靭さと原動力の表れである」とし、「新型コロナウイルス感染症が世界経済の構図を変えるが、中国経済はその中でより大きな役割を果たすことになるだろう」と述べた。

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ジャック・マーティン氏

中国経済は第2四半期で前期のマイナス6.8%からプラス3.2%の伸びに転じたことを受け、ジャック氏は「非常に勇気づけられた伸びだ。中国が感染拡大の封じ込めに成功したのと同じように、経済の速やかな回復も明確なメッセージを伝えてくれている。

それはつまり、中国政府のガバナンス能力が非常に有力なものであるということだ」とした。

今回発表された経済データでは、年間売上高が2000万元(日本円で約3兆円)以上の「一定規模以上」工業企業の付加価値は4.4%増加し、中でもハイテク製造業がとりわけ安定した成長を見せる。ジャック氏は「ハイテク産業の発展は中国の経済成長を後押しする重要な原動力になりつつある。アリババ社に代表される一連の重要な企業は中国経済をデジタル時代へと導いていく最中にある」と述べた。

ジャック氏は「感染症がもたらす影響の一つは、世界経済の構図に起こった大きな変化であり、世界経済の中心は米国から中国へと次第にシフトしていくだろう」と指摘し、「もちろん、その具体的なプロセスは見届ける必要があるが、これらは絶対に起こることだと私は確信している」とした。

【中国】実演販売のオンライン版 “ライブコマース” の現状と浮き彫りになった課題点

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中国メディア「明報」より

中国のライブコマースは現地ユーザーが最も重要視する“クチコミ”の発展型で2012年時点、中国SNSユーザー数の高いWeiboやWeChatでオピニオンリーダー的な存在が利用し写真や動画でフォロワーむけに発信し、市場が活況となった。これに着目した中国EC業界シェア1位のタオバオが2016年に先駆者となり自社及びグループ会社のソリューションを活用し展開。それに続き大手ECプラットホーム会社や動画配信運用会社が、サービスを開始した。これによりライブコマースで“物を買う”が定着し、2017年時点でのライブコマース年間売上が190億元であったが2019年では4338億元、2020年では9610億元が予測されている。(データ元:iiMediaResearch) そのため、現状の中国のネット販売戦略では欠かせない販売手法の1つとなっっており2020年6月18日商戦では新型コロナ禍では外出しにくい環境下において、消費者との販売接点として重要な役割を果たした。

ライブコマースを利用する“ユーザーの声”(以下VOC)でも「使用感がリアルに伝わってくる」「配信側とソーシャルなやりとりができる」などの理由の他、最も購入理由が高かったのが「低価格」や「費用対効果の高さ」であった。一方で、「オピニオンリーダーが好き」などが購入理由シェアの半数弱を占める結果でもあった。

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一方でネガティブなVOCやトラブルも少なくない。「ライブ配信で紹介された商品と手元に届いた商品が違う」「ライブ配信者の誇大表現」や「アフターサービスがない」など、商品ブランドに多大なる悪影響を及ぼすVOCがライブコマース利用者のうち37%もあった。(データ元:中国消費者協会)

これを受け中国政府の発表では、「管理を強化し、オピニオンリーダーによる商品販売の調査を実施、模造品販売や誇大表現に対する厳格な処罰を与える」などの方針を表明。

 

これら両軸のVOCを基礎情報とした改善対策は言うまでもないが、出品企業の

出品考査や基準などのハードルがさらに高くなることも予測される他、ライブコマースとの出品契約をする際の、広告の代わりに卸率を安価に設定した商品PR手法についても、通常期での販売が難しくなりブランドイメージをチープなものに変えていく原因ともなりうるであろう。

【ベトナム】2021年1月から改正労働法が施行 =外国人労働者と雇用契約=

  

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ベトナムにで改正労働法(法45/2019/QH14)が2021年1月より施行されます。ベトナムで働いている方、これからベトナムへ参入される企業の人事労務の方に関係する「外国人労働者に関する法改正」の中で「外国人労働者雇用契約」についてお知らせします。

現行法ではベトナム人労働者(ベトナム国内で勤務するベトナム人)の場合、有期雇用契約締結の更新は2回までとされており、その後は無期雇用契約を締結しなければなりません。

一方で外国人労働者の場合は、労働許可証の有効期間が最大で2年間です。仮に無期雇用契約を締結すると、労働許可証雇用契約書との間で矛盾が生じます。また、現行法では外国人労働者雇用契約の種類と期間が明記されておらず、読み手によって解釈が分かれる事態も起こる可能性もありましす。

このような曖昧な規定も、今回の法改正によって明確化します。改正法151条には、「外国人労働者雇用契約の期間は労働許可証の期間を超えてはならない」ことが明記され、外国人労働者との有期雇用契約の回数の上限も設けられていません。従って改正法施行後は、外国人を雇用する場合、労働許可証の有効期間に合わせて最大2年毎に有期雇用契約の締結をすることとなり、無期雇用契約とはならないわけです。

 

本記事は、執筆時点における一般的な情報です。

【中国】無印良品、中国での利益減少からみる中国マーケットの考察

 

2020年1月10日、人民網(中国のニュースメディア)無印良品MUJI)は「中国エリアでの利益が8年ぶりに減少に転じる」とともに、品質の問題がたびたび明らかになっている。無印良品(上海)商業有限公司MUJI中国本部)は9日、「中国大陸部市場における具体的な売上高のデータはこれまで発表したことがない」とのコメントを発表した。「北京日報」が伝えた。

さきにメディアが伝えたところによると、MUJIブランドを展開する株式会社良品計画が発表した2020年度第1四半期の決算では、中国市場の売上高が初めて減少したという。

無印良品MUJI)は「中国エリアでの利益が8年ぶりに減少に転じる」とともに、品質の問題がたびたび明らかになっている。無印良品(上海)商業有限公司MUJI中国本部)は9日、「中国大陸部市場における具体的な売上高のデータはこれまで発表したことがない」とのコメントを発表した。「北京日報」が伝えた。

さきにメディアが伝えたところによると、MUJIブランドを展開する株式会社良品計画が発表した2020年度第1四半期の決算では、中国市場の売上高が初めて減少したという。

※2020年1月10日、人民網(中国のニュースメディア)より

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上海にある無印良品

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無印良品の店舗内


 

日系を含む海外企業の中国大陸参入が盛んな時期、中国での販売価格は現地販売金額と比べ、約3倍であった。例えば日本企業の場合、中国で製造されていても、一旦、中国から日本へ輸出し、その後中国へ輸出するなどの輸送コストや中国で輸入する際の増値税(税率は商品カテゴリ毎で違う)などが重なり、その他、現地でのブランディングを意識するなどで高い単価設定をしていた。この頃、ユニクロも同様の商品単価。

しかし、一部の中国に住む消費者も現地での販売単価を知っているため、これらの情報はSNSを通じるなどで情報を得て、「日本に行った時に買う」などの意識が高まっていた。

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中国SNS「微博」

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ユニクロ中国のweibo公式アカウント




 

それから約1年後、日本に住む中国人を中心にSNSで個人貿易、いわゆる購入代行が盛んになった。ここでの主な対象商品は化粧品など日常消耗品のほか、食料品、次いで衣類や雑貨類となった。

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個人間で使用されるSNS「WeChat」

 

そこから数年後に中国人の日本行き観光ビザの取得条件が緩和され、訪日中国人が加速度的に伸びてきたのだが、これと同時期に中国に参入する外資系小売企業の販売単価に変化が起きた。

今まで中国で販売されている単価は現地の約3倍であったが、約1.5倍程度になった。

当然、消費者から認知度のあったユニクロ無印良品の小売は右肩上がり。なかなか手が出しにくかった「3倍」から、手が出しやすい「1.5倍」へ。

消費者の心理的には3倍なら「日本に行った時に」だが、1.5倍なら「日本で買うよりもお得」と変わる。さらにネットショップ文化でもある中国はこれらブランド商品をネットで購入することで「買い物の時間(モノ消費思考)から余暇の時間(コト消費思考)へパラダイムシフトするきっかけにもなった。

同時期より日本への観光先は東京などの首都圏から富士山や北海道など「時間を楽しむ」場所へと変わり、そもそも購入思考が高い中国人にとって、これら時間を楽しむ場所は魅力と感じ家などの不動産を購入する流れになった。また、上海や北京などの中国都心部と比較しても、日本の不動産価格は非常に安く、富士山付近や北海道の不動産購入がトレンドにもなった。

 

このようなパラダイムシフトが起き、中国人消費者が成熟し商品購入をする際の「比較」する項目が大きく変わった。

「高いものが良い」、「ブランドバリューがあるから良い」などから「品質、機能性」などが注目される。

 

基本的な買い物は中国最大のネットショップのプラットホーム「淘宝(TaoBao)」を利用するのだが、商品を検索する際、品質や機能、価格、そして消費者の声などを参考に購入する。衣類や雑貨類など競合の多いカテゴリについては、やはり「良いものを安く」が基本で、更には「妥協する」が加味される。

そのため、一過性であったブランドトレンドが収束。さらに、毎年高騰する生活費。ともなれば、必然的に消費単価が安くなる。

 

 

一方で、海外商品を安く買いたいという気持ちはあるものの、本物志向が高い中国人の意識で、「日本の商品は日本から買いたい」が本音である。がこれについては次回以降の記事で。

【バングラデシュ】経済発展途上国の中で見えた「生の美しさ」


バングラデシュ「生の美しさ」

 

経済の発展が凄まじいスピードで発展するバングラデシュ

海外企業の進出に伴い、5つ星ホテルなどの宿泊施設も増加している一方で交通網整備や電力不足などの課題点も浮き彫りに。

このインフラ環境整備に伴って、先進各国企業が同国に進出も多く、所得の格差は未だあるものの、近い未来の一般消費者向けビジネスを目論んだ進出も増加。

 

こういった経済発展の渦中にいる現地の人々から見えたのは

「生の美しさ」だった。

 

人として生きていく上で必要なことを最優先に。

先進国ではもう見ることもないであろう姿が、ここにはあった。

【中国】KOLと経済効果。年間1兆円を生む超インフルエンサーとは

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ルーハン・ホールディングス共同創立者の張大奕(ザンダーイー)(写真出典:Visual China)

中国版ユーチューバー、「網紅(ワンホン、中国ではネット上の人気者の意)」が世界的に注目されている。2018年、網紅がユーチューブでライブ配信したことで売れた商品の額は予測値で676.6億元(約1兆円)を超えたという。

中国国内Eコマース販社のリーディングカンパニーであり、網紅を含む中国のインフルエンサーを発掘・育成する企業である「ルーハン・ホールディングス」が今年、アメリカで新規株式公開を果たしたことも、中国のインフルエンサー起用型販売活性の隆盛を物語る。

 

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インフルエンサーとしても人気が高い

中国経済の現在と未来を変える「網紅」とKOLたち

ビジネスモデルを網紅たちに依存するこの企業は、現在の中国における「網紅経済」でもっとも成功した企業となっている。そして、ルーハン・ホールディングスの共同創立者、張大奕(ザンダーイー)自身を含むオピニオン・リーダー集団は、中国経済の現在と未来を静かに変えつつある。

2018年、米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーが発表した「中国ラグジュアリー・レポート」によれば、現在、ミレニアル世代が中国のラグジュアリー製品市場の主軸となりつつある。さらに、この世代の消費傾向は「KOL(キー・オピニオンリーダー)」に大きく影響されているという。

では、どのような人物が「KOL」と呼ばれるのか。 中国のメディア・コミュニケーション分野のリーディングカンパニー「群邑中国」のプロダクト・ディレクター楊晉竜(ヤン・ジンロン)によれば、「KOLの持つべき3つの要素」は、1.特定の分野で実績があること、2.能力があること、3.相当量のファン層があるとのこと。”2”はあいまい性が高いため省くが、特定の分野において相当量のファンを保有し、これらのファンに影響をおよぼせること、だ。

代表的なKOLの一人であるDivus Zhengは、KOLでもっとも重要なのは、いわば「つぶしが利くこと」と言う。「独自のブレない主観を持っていて広いジャンルに応用が利くこと、外見だけに頼らなくても市場にアピールできることが大事です」

群邑中国は昨年発表した「2018年美容社会白書」の中で、独自調査によるデータ分析ツール、「Xiaohongshu」を用いた「RED網紅分析2018」を紹介している。ここでは影響力のある100人が名を連ねているが、セレブは一握りで、美容の分野に影響力を持つKOL、あるいは網紅たちがリストの大部分を占める。

その中でも5位のブロガー、ビューティーポテト(Beauty Potato)は、中国の人気モデルで女優のアンジェラベイビーよりも高い「影響力指数」を誇っている。

多くの報告書が、網紅たちの間で現在、「种草(草を植える)」というキーワードが取り沙汰されていると報告している。「草」を育てる能力があるか、あれば何種類の「草」を育てられるか、そしてそのことによって市場に与えられる影響力はどれくらいかを表す。この能力は調節、消費者の消費傾向を左右するというのだ。

 

 

群邑中国グループの携帯事業戦略ゼネラルマネージャー、趙晨(チャオ・チェン)は、いわゆる網紅とKOLの間に明確な境界線はないと考えている。彼らは大きな影響力を持ち、発信力も強い。

「網紅はKOLと一部重複しています。大きな影響力と質の高いコンテンツ発信力を持つのが網紅の必須条件ですが、特定の分野で実績がありさえすれば、彼らはKOLと呼ばれ得ます」とチェンはいう。

そして「紅網経済」の発展に伴って、Taobao(タオバオ)やJD.com、アマゾンといったEコマースプラットフォームが、購入につながるアイデアをKOLの手法から借りるようになってきている。

EコマースとKOLの連携モデルは、マーケティングの主砲としてきわめて強力だ。ある中国国内メディアの報告によれば、前出のルーハン・ホールディングス共同創立者ジャン・ダーイーは、ある新商品を「2秒で売り尽くした」という伝説的な記録を打ち立てたという。その驚異の影響力は多くのトップセレブにも肩を並べる。

こうした「大きな波」の中で、KOLに立ち上げを依存するEコマースのプラットフォームは、国外向け直販を専門にするEコマースサイトも含め、後を絶たない。

海外のショッピングサイトたちは、ロングテール理論を参考にEコマースでもっとも有効な5つの商品カテゴリーをはじき出している。それらは「マタニティと子ども」「健康」「ファッション」「美容」「流行ブランド」だ。そして彼らは、これら各カテゴリーのKOLと積極的に連携しようとしている。

 

 

海外向けショッピングサイトの共同設立者兼CEOの沈学華(シェン・シュエフア)は、プラットフォームにしろ連携の形にしろ、その連携の経路や形にしろ、この2年間におけるKOLの変化も大きいと考えている。

「われわれは初期段階から、KOLを一人ひとり見つけていきました。KOLの方でも、自分をうまく仲介してくれる企業を見つけようとしていました。一人のKOLとの連携により、同じ会社の別のKOLとも連携できます。弊社はこれまでに、独自の『KOLデータベース』を構築しています」とシェン・シュェファはいう。

 

 

セルフメディアの多様性と不確実性

「網紅経済」の発展にともなって、セルフメディアのプラットフォームもますます増えてきている。KOLと電子商取引の連携はひとつのプラットフォームだけに限定されるものではなく、複数のプラットフォーム上で予想もしない効果を生み出す。

自身がKOLであるDivus Zhengに言わせれば、いわゆるオピニオン・リーダーはセルフメディアで「遊ぶ」ことを覚えた好奇心の強い人々だ。KOLは誰より早くユーザーになる、いわばアーリーアダプターだ。そして経験したことを、自らのユーザー体験として公開する。そして彼らはほかのユーザーにもKOLになることを奨励するので、自然発生的に一種のコミュニティが形成されるというのだ。

Zhengは、このようにも言う。「その後の継続的なコミュニケーションで影響力を持ち、KOLでい続けるには、コンテンツの制作と交流に注力するより多くのエネルギーが必要です」